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2008年 07月 15日
以前このブログで、ザ・ビートルズのロック史上に残る名作アルバム『SGT.ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』でのメンバーのミリタリー・ルックがじつはNHKの連続テレビ小説『おはなはん』からインスパイアーされたものだと書いたことがある。
そこでは、同テレビ小説、鈴木京香主演の『君の名は』のタイトルバックの絵が風間完氏の風景画だったことから、そのような話をはじめたわけなのですが、その『おはなはん』のタイトル挿絵も風間完によるものだったのですね。 風間完は、松本清張『点と線』、瀬戸内晴海『京まんだら』、司馬遼太郎『花神』『飛ぶが如く』、遠藤周作『女』、向田邦子『思い出トランプ』、五木寛之『青春の門』池波正太郎『真田太平記』など数多くの作家の新聞・雑誌小説のすばらしい挿絵を手がけた。 ところが、そうした小説が単行本化されるときには、連載時に載っていた挿絵はなくなってしまうことが多い。こうした点が、岩田専太郎といった例外をのぞけば、挿絵画家のちょっと悲しいところでもある。 私がこの風間完氏のお宅を頻繁に訪れるようになったのは、1980年代に入ってからのこと。親しい友人が、完氏の息子さんだったからだ。友人といっしょにいる居間に、風間完氏も銀座などで文壇のそういった作家たちとの交流からの帰り際に時折姿を現すこともあったが、どこか気むずかしく、威厳に溢れるように思われて、あまりお話を交わすことはなかった。その風間完さんが、急に相好を崩したように思われたのは、友人に女の子のお子さんが生まれた時だ。お孫さんの誕生がよっぽどうれしかったに違いない。彼女の絵をたくさん描き残している。90年代に風間完氏の仕事で、意外に思ったのはシンガーソングライターの森田童子の二つの作品『ぼくたちの失敗』と『たとえばぼくが死んだら』のCDカヴァー絵を手がけたことだ。これは、先日ヒロプトンさんのブログを読んで、ひさしぶりに思いだした。この頃、野島伸司脚本の『高校教師』というドラマがヒットし、その主題歌に森田童子の曲が使われ、リバイバルヒットをしてふたたび森田童子が脚光を浴びたのだ。風間完氏の絵は美人画と風景画のふたつがおもに有名だが、これは前者にあたる印象深い鉛筆画の作品である。 その風間さんちに訪れるたびに、僕にはいつもあまりにすてきなので感慨深く眺めてしまうものがある。それは、風間完氏が描いたサンヨーの冷蔵庫の扉絵だ。当時、魔法瓶や冷蔵庫に人気デザイナーや画家が意匠を施したものが流行ったことがあった。有名なのは、森英恵デザインの蝶々が描かれたタイガー(象印?)魔法瓶などがあった。このサンヨーの冷蔵庫もサンヨー・アート冷蔵庫という名前で売り出されたものらしく、やはり森英恵デザインのものもある。そのひとつを風間完氏も描いたのだ。絵を見ると氏が留学していたパリのシテ島のイラストマップであるらしい。以前にも書いたが、私は風間完氏のモノクロームの風景画が大好きなのだ。堀内誠一が、風間完の絵を見ていたかどうかは知らない。けれど、堀内誠一が雑誌アンアンに連載していた『空飛ぶ絨毯』で丹念に描かれたパリのイラストマップを見ると、私はどうしても風間さんちの冷蔵庫に描かれたパリ、シテ島のすてきなイラストマップを思いだしてしまうのだ。 風間完氏は2003年12月27日に亡くなった。そのことを新聞の訃報で知った共通の友人が電話をくれ、あわてて風間家に訪れた日を今でもよく覚えている。 風間さんちの冷蔵庫は、それが使われなくなった現在でもその居間にそっと静かに鎮座している。
by tsukimoto_natsumi
| 2008-07-15 09:02
| Art & Design
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