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2008年 05月 30日
いかにして村上春樹ができあがったかを探求しているわけではないが、ウィリアム・フォークナーの『サンクチュアリ』(加島祥造訳・新潮文庫)を読んだ。この前友人と話をしているときに、たまたまフォークナーとボウルズの話になり、私はそのいずれも読んでいなかったので、これを機会に読んでみようと思ったわけだ。『ノルウェイの森』で主人公のワタナベが読む『八月の光』か短編集でもよかったのに『サンクチュアリ』を選んだのは、ときどき読書の参考にさせてもらっている「松岡正剛 千夜千冊」 でフォークナーのこの本を取り上げていたからだ。(ちなみに「千夜千冊」ではひとりの作家につき一作しか扱わない方針をとっている。)前にも書いたけど、私はフランス文学出身なので、このアメリカ文学を代表するひとりフォークナーの作品を過去読んだことがなかった。
それにしてもすごい話である。もうどうしようなく陰々滅々たる内容で主人公の弁護士ホレス・ベンホウくらいしかまともな人間が登場しないと言ってもいいくらいだ。ほんと救いようがない。話の舞台は1920年代のアメリカ・ミシシッピー。その田舎の森の中にある廃屋になってしまった屋敷に密造酒をつくり生活している一味がいる。 こう書いただけで、このアメリカ南部の物語が独特の風土と因習を持つ陰湿なところの話であることがわかる。そこに生育する植物や鳥、または風景描写そして人物描写に関しては執拗に鋭い描写で迫るフォークナーの筆致。しかしストーリーに関してはけっして丁寧な書き方をしてはいない。まあ、さほど複雑な話ではないので、私たちはそのようなフォークナー独自のどこか乾いているようでねっとりとした精密な筆致を楽しんでいけばよいわけなのだが… ともかく物語の出だしがすばらしい。森の泉で水を飲んでいたホレス・ベンホウは、そこに近づいてきた不気味な男ポパイと出会う。ホレスが言う。「どうやら君のポケットのピストルがあるようだね」「こっちこそききたいぜ。そのポケットには何があるんだい?」とポパイは逆に問う。「本だよ」「どんな本だ?」「ただ普通の本さ。誰でも読むような普通の本さ。誰でも本を読むとはかぎらんけれどね」「おめえは本を読むくちなんだな」とポパイは言った。 その後、二人はポパイの屋敷によばれほんの一時を過ごす。その後に展開される陰惨な物語を予見するようなぞくぞくする描写が続くオープニングである。 物語のあらすじをあとがきをもとに抜き出そう。 性的不能者のギャング(ポパイ)は17歳の女子学生(テンプル)をトウモロコシの穂軸で強姦し、仲間の素朴な人間(トミー)を野良犬のように射殺し、テンプルをメンフィスの売春宿に隠し、彼女を別の青年(レッド)と同衾させてその光景を見つつ興奮し、やがてレッドも撃ち殺してしまう。(その間にテンプルはアルコール漬け状態である。)最後にポパイは自分の犯さぬ別の殺人容疑から死刑になるが、死刑の夜も、ともに祈ろうという牧師のすすめを無視して、ベッドに寝ころび煙草をふかしている。また、トミー殺害とテンプル強姦の容疑をかぶった酒密売人(グッドウィン)は「町」の偏狭な道徳観、検事の策謀やテンプルの偽証によって有罪となり、さらに町の男たちによって夜中に留置場から引きだされ、私刑(リンチ)にあう。ー ガソリン缶を負わされ、生きたまま焼き殺されてしまう。 とまあ、どうしようもないこんな話なのだが、この小説にはじつはもうひとつのストーリーがある。それは弁護士ホレスが保護するグッドウィンの小さな赤ん坊を抱える無垢な妻の物語だ。この部分が私はとてもいいと思った。この小説の唯一の救いでもある気がする。この小説は、凶悪なギャングたちやアメリカ南部の陰湿な物語であると同時に無垢な魂を持つ女の物語の側面をもっている。ただし、フォークナーはドストエフスキーのようにその魂の深淵まで誘っていきはしない。ただ投げ出すのみである。 これを読み終え、多くの日本の小説家がフォークナーから強い影響を受けていることを思った。それは大江健三郎であり中上健次であり、最近では『シンセミア』という傑作を書いた阿部和重である。 その他: 『村上春樹全作品 1990-2000 短編集Ⅱ』(講談社・2003年) 彼のふたつの短編集『レキシントンの幽霊』と『神の子どもたちはみな踊る』をあわせたもの。後者からの「かえるくん、東京を救う」と村上春樹には珍しくものを書くということの意味を小説上で問いつめている「蜂蜜パイ」の二編がよかった。 黒川創『イカロスの森』(新潮社・2002年)先日読んだ『かもめの日』があまりにすばらしかったので、著者の過去のものを探ってみた。3つの時制のストーリーが、パズルのようにばらばらに進行しながら、やがてひとつの物語をなす。ただ、人物描写の深みに乏しく、『かもめの日』にいたる習作のようにどうしても感じてしまうのは、しょうがないところか。 ところで、このところバークレー在住の映画評論家・町山智浩氏のポッドキャスト配信「町山智浩のアメリカ映画特電」と、同じく町山氏も出演しているTBSラジオの「コラムの花道」のこれまたポッドキャスト配信を聴くのがとても楽しみになってしまった。「コラムの花道」は町山氏以外には吉田豪のコラムがずば抜けておもしろい。 これはお勧めです。
by tsukimoto_natsumi
| 2008-05-30 08:59
| 本
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