カレンダー
カテゴリ
全体
Music 映画 本 マンガ ラジオ Art & Design 80年代日誌 90年代日誌 ホテル・旅館 思いついたこと My Apple Story 日記or備忘録 仕事にまつわるエトセトラ 悠へ My Profile My Works and…☆
田旗浩一(月本夏海):My Profile
My Works 誰もアンディ・ウォーホルを知らない はっぴいえんど ジョン・コッシュのすべて 変形ジャケットの世界 官能的!Sensual Covers カル・シュンケル&ネオン・パーク 水玉アワー(1986) Tokyo Pictures(1987) Forest(1993) LINKS 神の味噌汁 ____________________☆ Cherubim weblog ____________________☆ Fillmore And More _____________☆ 利庵 小笹寿司 銀杏 最新のコメント
記事ランキング
フォロー中のブログ
タグ
澁澤龍彦(16)
堀内誠一(11) スガシカオ(10) 鈴木清順(6) ユーミン(6) 村上春樹(6) 大島弓子(5) ギドン・クレーメル(5) The Beatles(5) ボブ・ディラン(5) 山下和美(5) マルタ・アルゲリッチ(5) 亀渕昭信(4) ティム・バートン(4) ザ・タイガース(3) 中森明菜(3) ロバート・アルトマン(3) ミッシャ・マイスキー(3) 角田光代(3) ジョン・レノン(3) 以前の記事
2024年 01月
2023年 10月 2023年 02月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 02月 2016年 03月 2014年 08月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 04月 2013年 01月 2012年 10月 2012年 04月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 11月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2010年 11月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 07月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 07月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 11月 2005年 10月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 07月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2004年 12月 2004年 11月 2004年 10月 2004年 09月 2004年 08月 2004年 07月 2004年 06月 検索
最新のトラックバック
ライフログ
その他のジャンル
最新の記事
外部リンク
ファン
ブログジャンル
画像一覧
|
2008年 02月 21日
演歌の星を背負った宿命の少女の物語
石坂まさをの『きずな』(1999年・文藝春秋)は、母子の「きずな」を複層的に描いた本である。 複層的というのは、石坂本人とその母(実母ではない)の物語と、藤圭子と流しをしていた盲目の母、そして宇多田ヒカルとその母である藤圭子の物語が、ある種それぞれ似姿のようにだぶって語られていくからだ。 この本が書かれた1999年という時代を考えるとき、とりあえず物語が、当時、宇多田ヒカルが、そのファーストアルバム『First Love』を日本で800万枚以上の、国内アルバム売り上げ史上最大の超メガヒットをさせていた時期ゆえに、宇多田ヒカルをこれから必死に売り出そうとしていた藤圭子と宇多田母子のエピソードからスタートするのは、やむを得ないのかもしれない。 平成4年(1992年)の夏、作詞家・石坂まさをに一本の電話が入る。申すまでもなく、石坂まさをは、藤圭子の代表曲『新宿の女』『女のブルース』『圭子の夢は夜開く』『命預けます』の作詞ばかりでなく、彼女のマネージャーとして歌謡界に送り出した人物である。 その電話からの声を石坂は、こう表現する。「電話の向こうの声は太いけれど、相変わらずなめらかなビロードのような艶やかさで、憂いを含んだ話し方も昔のままだった」 声の主とは、もちろん藤圭子であり、彼女は明日会えないかと、何年も会っていない石坂に、まるで昨日別れたばかりの友人のように切り出す。そして、翌日青山のホテルで会ったのは、藤圭子と彼女の夫で音楽プロデューサーの宇多田照實と、まだ9歳のヒカルである。圭子は、石坂にヒカルの歌をぜひ聴いて欲しいと迫る。圭子はヒカルがいかに天才であるか、熱弁をふるい、一本のデモテープを石坂に差し出す。その隣で、ヒカルは無心に漫画を読みふけっていた、という表現が、その後の物語のちょっとした余韻になる。石坂は、そのテープを受け取ることができない。 まもなく、石坂は売れない作詞家時代での、はじめての藤圭子との出会いに回想をめぐらせていく。 昭和43年(1968年)に、石坂のもとに、石坂の弟子だった男性歌手が17歳の少女を連れてきた。ここでも、少し本から引用する。 「少女の名は阿部純子。十七歳。肩まで垂らした長い髪と、日本人形のような丸くて色白の顔に黒くて太い眉が印象的だった」 すでに、このシーンで私たちは、翌年『新宿の女』でデビューし、その翌年には、同曲の他に『女のブルース』『圭子の夢は夜ひらく』『命預けます』を大ヒットさせた歌手・藤圭子のみごとなまでの素描に出会うのである。 同時に、石坂はその面差しとは似ても似つかない、太くてドスのきいた彼女の声に驚き、彼女に曲を唄わせる。ギターをポロンと奏でながら純子が唄うのは、『星の流れに』そして『カスバの女』である。 ここで、石坂は唸ってしまう。私もこの本のこうした開闢にやはり唸った。 『星の流れに』は、敗戦直後、街に立ち春を売る女たちの哀しい心情を唄ってヒットした歌であり、『カスバの女』もやはり、明日なき外人部隊の兵士たち屯する酒場で、春を売る女が刹那に兵士に恋して歌う、今では無国籍歌謡と言われてもしようがないキャバレー歌手出身の竹越ひろ子が67年にヒットさせた挽歌の傑作であるからだ。(本歌はエト邦枝) ちなみに、竹越は力道山の経営していたクラブリキの専属シンガーだった。 こうして、石坂は藤圭子を預かる羽目になるのだが、この時、石坂はまだ、藤圭子の存在をうまく咀嚼できていない。彼の肩を叩いたのは、その様子をとなりの部屋で聞いていた石坂の母である。それでも、石坂は少女の生い立ちや育った環境が気になってしまう。 ご存じのように、圭子の父は浪曲師であり、母親は盲目の三味線弾き。その両親のもとで、少女は早くから北海道を流して暮らしていたのである。早い話、ドサ廻りの「門づけ」である。(鈴木清順の映画『ツィゴイネルワイゼン』で麿赤児らの演じる門づけの姿を想像すれば、すぐにわかっていただけるだろう。) 翌日、少女から石坂に直接、電話が入る。今度は彼女の両親とともに会って欲しいのだという。ここで、少女の両親や育った過酷な環境が描かれる。純子の歌のおかげで、一家は何とか旭川に家を構え、そうして彼女を歌手にするために上京してきたのである。しかし、父親はどこかふて腐れ、熱心に純子を売り込むのは、母澄子だ。(ここにも、これが母子の物語であることが強調される。) 石坂は、少女を育てる決心をする。そして、阿部純子は「藤圭子」になり、石坂自身も本名の澤ノ井龍二という名前を「石坂まさを」に変える。 ここまでが、第1章。第2章は、石坂の生い立ちの話に振り当てられ、第3章は、石坂が作詞家を決意し、なんとか自立するまで。いよいよ第4章からが、藤圭子を売り出すまでのストーリーになる。 (つづく)
by tsukimoto_natsumi
| 2008-02-21 22:53
| Music
|
Comments(0)
|
ファン申請 |
||