2010年の12月にそれまでいた会社が倒産した。
2011年、1月くらいから、残党たちが移籍した渋谷の会社に間借りして、私はある韓流スターのDVDを作っていた。
3月11日は、そのDVD制作もぼちぼち終わりに近づいていた。いっしょに、その渋谷の事務所に間借りしたプロデューサーのOはドラマの撮影の初日だった。
午後2時40分過ぎに地震が起きた。机の上のパソコンとハードディスクが倒れないように、必死で机を支えた。
揺れがおさまり、みんなで外に出ると、まだ東邦生命ビルがゆさゆさと大きく揺れていた。ツイッターとradikoから情報を得ながら、深夜にはやっと動きはじめた地下鉄でなんとか家に帰ることはできた。
DVDの納期は地震のおかげで、ひと月ほど延びたが、その分ギャラが増えるわけではなかった。
それから、いっこうに仕事がなくなった。電車のなかで、しょっちゅう溜息をついていたら、近くの乗客から「あなた、ずっと溜息ついてますが、なにか病気ですか?」と嫌そうに言われた。
ヒマばかりだったので、映画をまた観るようになった。
震災の年から、ボクの名画座通いがはじまった。