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2012年 02月 21日
01月21日(土)
「川口家の人々」三益愛子二本『母の旅路』(清水宏監督 共演:佐野周二、仁木多鶴子、藤間紫 1955・大映東京)『がめつい奴』(千葉泰樹監督 共演:森雅之、高島忠夫、草笛光子、安西郷子、中山千夏 1960・東宝)@神保町シアター。ともに脚本は笠原良三。 『母の旅路』 清水宏、初のシネスコ作品。サーカス団の一家(佐野周二、三益愛子、仁木多鶴子)が父の都合で突然実業家に戻り、ハイソ社会に仲間入りする。あり得ない話の連続だが、それは映画なのでどうでもいい。「母物」というお仕着せ企画に相違ない。清水宏は職人ぶりを発揮してみせる。無関心に。 『がめつい奴』 日本のカスバ、釜ヶ崎という暗黒街(冒頭ナレーションではそう言う)。ごうつくババア三益愛子が営むホテル(!)で繰り広げられる人間群像喜劇。カリカチャーされた東宝役者陣の丁々発止が映画を引っぱる。ろくでなし森雅之、あいのこ占い師・安西郷子、草笛光子の三角関係が心に残る。 原作者菊田一夫や主演の三益愛子も在籍していた浅草の「笑の王國」の得意としたアチャラカ喜劇に端を発しているのだろう。菊田が開発したこの分野は、菊田を目指し真似た花登筺(「劇団・笑いの王国」も真似た)〜三谷幸喜と継承され続ける。「有頂天ホテル」はこのヴァリアントだろう。言ってしまえば、三益愛子が一泊三十円の「釜ケ崎荘」をホテル、ホテルと呼ぶように『がめつい奴』は典型的なグランド・ホテル形式のアチャラカ群像喜劇で、じっさいに釜ケ崎にロケなどしてはいない。東宝技術陣が現出させた釜ケ崎、東宝特撮陣がつくった通天閣が、そこはかとない演劇空間を創出する。 01月22日(日) ショーケン映画祭最終日、『226』(監督:五社英雄 脚本:笠原和夫 共演:新旧オールスターの方々 1989)『いつかギラギラする日』(監督:深作欣二 共演:木村一八、荻野目慶子 1992・松竹)@銀座シネパトス。 ああ今日で「萩原健一映画祭」も終わりです。 『226』 顔、顔、顔。冒頭から全体の位置関係を示すことなく、クーデターを決起する陸軍将校たちの会話を、ショーケン、三浦友和、本木雅弘らの「顔」のアップでつないでいく。それほど、五社英雄は226事件を男たちの顔の力で語ろうとする。当時の赤坂見附周辺をみごと再現させた映像京都の底力! 『いつかギラギラする日』 鼻に絆創膏を貼りショーケンは四駆を駆って怪物化する。これがすさまじくかっこいい。裏切り者、木村一八をクネクネとネチネチと蛇のように執念深く追い続け、うねりグラインド化する追跡、逃走劇のあっぱれ。荻野目慶子が空に放す赤い風船の深作いつものセンチメンタリズム。 この映画には昔の知り合いが二人関わっている。ひとりは音楽プロデューサーの佐々木麻美子さん。もう一人は音楽の菱田吉美くん。菱田くんには80年代いろんな音楽をお願いしたほか、いっしょに信州ロケを手伝ってもらったのが、とても思い出深い。元気にしてるだろうか。 01月26日(木) 3時過ぎから暇になったのでなにしようかと迷いつつ、結局渋谷に出てシネマヴェーラに。ちょっと悲しい。『漂流街』(監督:三池崇史 出演:TEAH、ミシェル・リー、及川光博 2000・東宝/大映)『理髪店主のかなしみ』(監督:廣木隆一 出演:田口トモロヲ、須之内美帆 2002) 『漂流街』 ブラジル人男と中国人女の二人が海外逃亡を謀る中、巻き込まれるヤクザと中国マフィアの闘い。トリッキーな撮影と編集。飛び交うさまざまな言語。それらが渾然一体となって作る三池流チャンプルー。ブチ切れる吉川晃司、不気味な及川光博が映画をやばくする。が、主役二人の魅力なさ過ぎる。 『理髪店主のかなしみ』 床屋店主、田口トモロヲがじょじょに本格的フェティシズムとマゾヒシズムを覚えていく過程がすばらしい。半袖の白のワイシャツ、黒のズボン、ノスタルジックな床屋の佇まい、その磨り硝子など、清潔な陰影が上品でほのかなエロスを醸す。殺しても死なない柄本明は、まさに怪演!靴屋でのブニュエルを思わせる靴のファッションショーもさることながら、女の選んだいちばん(匿名的で!)シンプルな黒い靴に、シャボンの香りと高級ワインの味を沁み込ませた廣木隆一監督の手腕にたしかな映画的手応えを感じる。それが、エンディングで赤い靴に化けるみごと。 01月28日(土) 『オペレッタ狸御殿』(鈴木清順監督 出演:由紀さおり、薬師丸ひろ子 2004年・松竹)トークショー:山根貞男×鈴木清順監督 『ピストルオペラ』(鈴木清順監督 出演:江角マキコ、山口小夜子 2001年・松竹)@新文芸坐 とても久しぶりに清順監督を拝見。もう映画は度胸で撮らないと… 『オペレッタ狸御殿』 封切り時から二回目の鑑賞。この映画は脇の由紀さおりと薬師丸ひろ子の歌の数々と化け物的存在感が圧倒的にすばらしい。とくに由紀の「びるぜん婆々のマイウェイ」、薬師丸と腰元たちの「人は病」、由紀と平幹二朗のかけあいラップ「私は神になりたい」等サントラがほしくなった。 『ピストルオペラ』 こちらも封切り来二度目。やはりいろいろ忘れている。まずスタンダード・サイズだった。相変わらず清順監督らしい(情緒とは無縁な)数学的カットつなぎや画面構成。だけどアングラ前衛風の後半、こんなにだらだらしてたっけ?江角マキコももう少しいい声なら、もっとよかったのに。 これ以上凍えたら、どうかと思ったがロベール・ブレッソン二本。『スリ』(出演:マルタン・ラサール、マリカ・グリーン 1960・仏)『ラルジャン』(出演 クリスチャン・パティ、カロリーヌ・ラング 1983・仏)@早稲田松竹 こちらもひさびさブレッソン。ううう、ぐうの音も出ません。 『スリ』 どれくらい多くの人が、この映画からスリの行為を真似し練習しようと思ったことだろうか。何をしてドキュメンタリー調と呼ぶのかはわからないが、私にとっては、これ以上はないと思われる的確なカメラワークとなにひとつ無駄のない編集で、これほどスリリングな劇映画はないと思われるのだが。 『ラルジャン』 若者が不用意に使った一枚の贋札が波紋をひろげ、ある男の人生を狂わせていく。と書けば簡単だが、ここには言葉にならない「過激な音」の恐怖と「過剰な沈黙」の慈しみがある。この映画についていつまでも語っていたい高ぶりと、同時に押し黙るしかない気持ちを選ぶなら、沈黙を選ぶ。 01月29日(日) 寒い寒い強風の日曜『巨人と玩具』(増村保造監督 撮影:村井博 出演:高松英郎、伊藤雄之助、野添ひとみ 1958・大映東京)@神保町シアター。『もぐら横丁』(清水宏監督 出演:島崎雪子、佐野周二、日守新一 1953・新東宝)@フィルムセンター。結果、ほのぼのよい気分でした。 『巨人と玩具』 キャラメル・メーカー3社の熾烈な闘い。しかもおまけに何を付けるのかが最大案件。観る側もあまりにアッパーな狂騒曲に飲み込まれていくことになるのだが…上昇志向の宣伝課長・(大熱演)高松英郎の企業戦士ぶりとその焦燥が痛々しい。川口浩あまりにぼんだあ。そして女はしたたかだ。 『もぐら横丁』 新進作家、佐野周二とそれを支える妻、島崎雪子。苦労を苦労とも思わせない屈託のない島崎雪子の話し方と仕草が天使的で、それが笑みとなり周囲の人々に、観客に空気のように伝わる。ラジオにまつわる様々なエピソードが微笑ましい。最後、仲店を歩く二人に押し寄せる人々は祝福の波か? 01月31日(火) とっとと逃げてしまいたかった、映画館へ。『妻は告白する』(監督:増村保造 脚本:井手雅人 撮影:小林節雄 出演:若尾文子、川口浩、小沢栄太郎 1961・大映東京)@神保町シアター 『妻は告白する』 劇薬である。濡れそぼった若尾文子が川口浩が勤める製薬会社に訪ね、その姿が小さく奥に見受けられたとき、場内はざわっとどよめき、何人かの観客は前のめりになった。そのときカメラは彼女の濡れた髪から着物の裾から滴り落ちる雫、汚れた足袋までを舐める。若尾文子は愛の劇薬である。 02月01日(水) 今夜は、おもいっきりキュートな若尾文子に逢いたくって。『最高殊勲夫人』(監督:増村保造 撮影:村井博 美術:下河原友雄 出演:若尾文子、川口浩、金田一敦子、船越英二、宮口精二 1959・大映東京)@神保町シアター 『最高殊勲夫人』 私たちはぜったい結婚しないと若尾文子と川口浩が誓い合うその瞬間からもう結末は見えている。あとは刻一刻と猫の目のようにくるくる変化する恋のさや当てゲームを楽しめばいい。女性たちのインテリアと絶妙にマッチするヴィヴィッドなモードに洒脱な会話、大胆な構図ににんまり拍手。なにも増村保造がイタリアから学んできたものはネオレアリズモだけではないと納得させる。ビルの窓枠を上手に使ったカラフルなオープニング・タイトルも小粋。丸の内地下街セットなどに大映東京の美術、下河原友雄の技がうかがえる。『巨人と玩具』に登場した菓子会社の看板もちらり。 02月03日(金) 渋谷での分科会の後、時間ができたので映画を観る。『惜春』(監督:木村惠吾 美術: 下河原友雄 出演:上原謙、山根壽子、笠置シヅ子 1952・新東宝)@フィルムセンター 『惜春』 妙ちきりんな印象を残す。笠置シヅ子がお得意のブギでグルーヴするオープニングのドタバタ喜劇調と、上原謙がお手伝いで現れた山根壽子との恋愛を高めていくしっぽり湿る場面ではまったくタッチが違う。愛の切ない別れの象徴となる踏切が効果的な桜舞い散る夜の街など下河原友雄の美術が光る。 どう考えても日帰り旅行にならぬはずの熱海に向かう上原謙と山根壽子。チークタイムで案の定終電を逃す。始発までじれったい限りを尽くす上原と山根の情緒。やっと愛を確信する二人。ところが笠置が帰ってきて「あなたベイビーちゃんができちゃった」!なんだ上原、シヅ子とやっていたのか! 02月04日(土) 『くちづけ』(監督:増村保造 出演:野添ひとみ、川口浩、三益愛子 1957・大映東京)@神保町シアター。マキノレアもの傑作選『清水港の名物男 遠州森の石松』(出演:中村錦之助、丘さとみ 1958・東映)『次郎長三國志 次郎長賣出す』(1952・東宝)@シネマヴェーラ渋谷。 『くちづけ』 川口浩の視線をそらしつつ、絶えず愛くるしくつぶらでありながら、女豹のような視線を投げつける野添ひとみ。それは浩に「くちづけ」のテーマをピアノで演奏させ歌うシーンで最高潮に達する。ラスト、浩「あの娘、10万円の価値はあるよ」愛子「面白い子かもね」と車で拾う。実話のよう。 『清水港の名物男 遠州森の石松』 途中何度もドゥミの恋愛ファンタジーを観ているかのような錯覚にとらわれる。とりわけ、湯殿で石松(錦之助)と郭の女、夕顔(丘さとみ)の微妙な距離を外から簾越しにとらえるショットは秀逸。中村嘉葎雄が言う「惚れたら片眼も開く」が叶うラスト、愛の奇蹟に吃驚。 『次郎長三國志 次郎長賣出す』 これはまだまだ「次郎長三國志」前史にすぎないと思いつつ、もはや落ち着いて観ること能わず。桶屋の鬼吉(田崎潤)のお茶目ぶり、清水の大政(河津清三郎)の深く抱える虚無に笑ったり泣いたり。それにしても、会話はおろか、物語さえ理解に苦しむフィルムの欠落ぶり! 02月05日(日) ひさしぶりに阿佐ヶ谷に映活。『危険な英雄』(監督:鈴木英夫 出演:石原慎太郎、司葉子、小沢栄太郎、志村喬 1957・東宝)@ラピュタ阿佐ヶ谷。『モテキ』(監督・脚本:大根仁 出演:森山未來、長澤まさみ、仲里依紗♡ 2011・東宝)@早稲田松竹 『危険な英雄』 金持ち一家の長男誘拐事件を嗅ぎつけた新聞社記者、石原慎太郎はこれをスクープ。あの手この手の記事で事件を暴走させる。高飛車で傲慢、減らず口を叩き続ける慎太郎は性懲りもなく今もそのままという印象。芥川也寸志スコアのギターアンサンブルの劇伴がドラマに乾いたタッチを与える。 『モテキ』 正直、原作マンガを読んだときはケッと思った。鼻持ちならない業界ドラマと思いきや、これがとんでもない思い違い。ダサイ部分も厭わず確信犯的に思い切りかっこ悪く描く。ミラーボールの嘘くさい光の中を涙まみれ汗まみれになって疾走する「遅れてきた」青春映画の特権と復建そして王道。 02月08日(水) 『次郎長三国志 次郎長初旅』(監督:マキノ雅弘 美術:中古智 出演:若山セツ子、石井一雄、森繁久彌 1953・東宝)『次郎長三国志 第三部 次郎長と石松』(出演:小泉博、久慈あさみ 1953・東宝)@シネマヴェーラ渋谷。半分、プリント状態チャックだぎゃ。 『次郎長三国志 次郎長初旅』 奥に港の気配を感じさせるパースペクティブが強調された町並み。法院大五郎の笛の音、ご用提灯に取り囲まれての次郎長とお蝶の夜の祝言。若山セツ子が初々しい。一家が立ち寄る尾羽打ち枯らした「するがや」のセットもすばらしい。石松と知り合う河原の決闘の大胆な省略! 『次郎長三国志第三部 次郎長と石松』 旅の途中、石松が追分三五郎(小泉博)と知り合い艶な投節お仲(久慈あさみ)にころっとやられる前半、次郎長一家が投牢される後半と話はグンと弾む。一部二部よりアップ・ショットも増え、カメラアングルにも工夫。しかし中古智を欠いたセットが安っぽいのが難。 02月10日(金) 『白夫人の妖恋』(豊田四郎監督 出演;池部良、山口淑子、八千草薫 1956・東宝)『ガス人間第一号』(監督:本多猪四郎 出演:土屋嘉男!1960・東宝)@新文芸坐 『白夫人の妖恋』 子どもの頃に観たトラウマ映画の一本。桃源郷的書き割り世界、泰然とした豊田演出。優柔不断な優男、池部良は蛇女、山口淑子に見初められ、二人は肉欲の海に溺れていく。お供の八千草薫がときに小生意気でかわいい。最後は山口に何度もびんたを喰らわせ主従関係が逆転するのもよい。 『ガス人間第一号』 我が偏愛的特撮映画史の中でもお気に入りの一本。踊りの師匠・八千草薫とガス人間・土屋嘉男の悲恋。とくにガス人間になる際の青紫色を帯びフラッシュアウトする土屋の恍惚として歩く表情と演技のすばらしさ!死に絶えるガス人間に花輪がどさっと落ちる哀しみ。薫、エリカに似てた! その後、なんだ今ごろかと言われるのを覚悟で観に行った『たまもの』(いまおかしんじ監督 撮影:鈴木一博 出演:林由美香 2003・新東宝)『監督失格』(監督:平野勝之 出演:林由美香 2011・東宝映像事業部)@キネカ大森 『たまもの』 千葉のどこかの街。ありきたりな風景。鄙びた港、郵便局、ボーリング場。偶然知り合った郵便局の男のために、ひたすら弁当を作り続けるさまがいとおしい。聾唖のように、無言のままカメラの前でおどけ戯れる林由美香はエンジェリック。最後の「ストライク、一発、ストライク!」が沁みる。 『監督失格』 林由美香との礼文への自転車旅行を経て画面にじょじょに不穏な空気が漂いはじめる。それが決定的になるのは、蒸し暑い夏、平野助手が確信犯的に廻したままのカメラを床に放置した時からだ。息ができないほど慄然とするほかはない。ドキュメンタリーはその終わりを巡って逡巡するしかない。 02月13日(月) 近くにいた猫にニャーと近づき、手を差し出したら、ネコパンチ三発喰らった、イテ。『夜の女たち』(監督:溝口健二 美術:水谷浩 出演:田中絹代、高杉早苗、浦辺粂子 1948・松竹京都)@神保町シアター。 『夜の女たち』 敗戦直後の大阪、戦争未亡人となった田中絹代がパンパンへ堕ち自暴自棄に暴れるさまがすさまじい。それほど関心があると思えない啓蒙的・教条的描き方の裏で、溝口の邪悪なサディズムと混沌がどろりと鈍く光る。それは二つ音楽が同時に流れるラストの焼け跡のシーンで典型的に現れる。 溝口健二『夜の女たち』マキノ正博、小崎政房『肉体の門』ともに1948年のいわゆる「パンパン映画」。(神保町シアター「監督と女優とエロスの風景」特集で上映中)そこで占領期「パンパン映画」のポリティックス(紙屋牧子)を読むために「占領下の映画」(日本映画史叢書11)を借りることに。 02月15日(水) こういう二本立てが正解だったのか、どうか…『日本沈没』(監督:森谷司郎 脚本:橋本忍 撮影:村井博、木村大作 出演:小林桂樹、藤岡弘、いしだあゆみ、竹内均 1973・東宝)『日本以外全部沈没』(監督:河崎実 出演:村野武範、藤岡弘、寺田農 2006)@キネカ大森。 『日本以外全部沈没』 観て、パロディやるんだったら、ほんとセンスと才能が必要だと思ったよ。それがない奴はパロディなんてやるな! 『日本沈没』 お懐かしや、およそ40年ぶりの再見。今回気づいたのですが、この映画の暴風雨や火山爆発シーンはこの3年前の大阪万博・三菱未来館と同一素材ではないでしょうか。日本縦断はおろか世界を跨ってすれ違いを演じる藤岡弘といしだあゆみの一大メロドラマは『砂の器』の姉妹編のごとくです。 チケットを買うときに、途中プリント切れの可能性もありとの事前アナウンス。じっさい、フィルムは褪色著しく、特撮に上乗せする大雨状態。プリント切れはしませんでしたが、息も絶え絶えの上映。東宝さん、『次郎長三国志』もそうですが、(あまりケチらず)ニュープリント焼いて下さい。 02月17日(金) 淡島千景さん追悼『日本橋』(監督:市川崑 共演:山本富士子、若尾文子、品川隆二 1956・大映)@神保町シアター。その後マキノ雅弘『次郎長三国志 第四部 勢揃い清水港』(出演:加藤大介 1953・東宝)『次郎長三国志 第五部 殴込み甲州路』(1953・東宝)@シネマヴェーラ渋谷 『日本橋』 柳腰の芸者姿がぴたりと決まるきっぷがよくてそのくせ純情一途な淡島千景を堪能する。ライバル芸者、山本富士子との火花を散らす意地の張り合いから、物語はとんでもないカタストロフに発展する。ふわっと空に舞う金色の扇子、それを飛ばす淡島、下でそれを受け取る山本のシーンが美しい。 『次郎長三国志第五部 殴込み甲州路』 港は秋祭り。その時にいっしょに踊る人と結婚するのよお蝶は言う。「姐さん、惚れたわ」と投げ節お仲も微笑む次郎長とお蝶のおのろけもさることながら、お蝶のか細さ、祭りで踊る指の細さが気になる。お千ちゃんついに結婚、ふられる鬼吉、綱五郎、悲しいが潔い! 『次郎長三国志第四部 勢揃い清水港』 一家に本格参入する森の石松と追分三五郎。組入りを懇願する豚松、加東大介と話は活性化。マキノにとって映画は祭りであることを深く納得する。ラストの黒駒一家討ち入りはまさに波が押し引きする群舞のよう。その時のかけ声がわっしょい、わっしょいなのだから。 02月18日(土) マキノ雅弘二本『男の顔は切り札』(製作:松本常保 出演:長門裕之、津川雅彦、南田洋子、轟夕起子 1966・日本電波映画/松竹)『次郎長三国志第七部 初祝い清水港』(出演:長門裕之、越路吹雪 1954・東宝)@シネマヴェーラ渋谷。四部で助けた力士、千葉信男がいつの間にか敵の親分に? 『男の顔は切り札』 上映開始とともにプリント切れ。昔の文芸地下や昭和館だったっら、生あくび後やがて「早くやれよー」の怒号。いきなり松竹マークから始まったが、日本電波映画のクレジットが入るのでは?フィルムは褪色したものを、さらに褪色させたような薄赤白映画。いつ切れるのかと落ち着かず。 深川の梅津組は解散、組長は区会議員に立候補。長門裕之、津川雅彦、轟夕起子、南田洋子など冒頭からマキノ一家のオンパレード。組長の殺害、借金返済の窮地に立たされるが、みんなでそれをわんさかわんさか楽しんでるかのような、お祭り騒ぎの賑やかさと人情味が全編を貫いている。 『次郎長三国志第七部 初祝い清水港』 お蝶さんの亡き後、百箇日までは明るくすごそうとする一家の健気な姿。情感が滲む。一家のコンビネーションは最高潮。三河万歳を演じる大政、鬼吉は兄弟のよう。大政、女房のおぬいが戻ってきてよかったね!。最後はもちろん港をあげてのワッショイ!ワッショイ! 02月19日(日) マキノ雅弘二本『次郎長三国志第八部 海道一の暴れん坊』『鴛鴦歌合戦』@シネマヴェーラ渋谷。『次郎長三国志』上映中に地震あり。 私は寛容ではない。きょうの『鴛鴦歌合戦』『次郎長三国志 海道一の暴れん坊』ともに16mm上映だったけど、二作とも内容がすばらしいだけに、心底楽しむことができない。とくに『鴛鴦歌合戦』は画質・音質かなり悪い。80年代にユーロで観たときも画質悪いと思ったけど、こんなに悪かったかなあ? 『次郎長三国志 海道一の暴れん坊』 先日観た『遠州森の石松』が、いくら本人によるリメイクにしろ、カット割り、カメラアングルまであまりに同じなのに驚いた。件の猿踊りは森繁の方が断然いい。エンディングの志村喬の率いる夕顔の嫁入り風景、波頭の前を駆ける次郎長一家は胸に大きな余韻を残す。
by Tsukimoto_Natsumi
| 2012-02-21 14:57
| 映画
|
Comments(3)
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by
PineWood
at 2016-04-26 23:25
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シネマベーラ渋谷の千葉泰樹監督特集ではカリカチュア笑劇の名作(がめつい奴)を清水宏監督特集では(もぐら横丁)を見ました。前者では草笛光子が文字通り光っていたし、後者では島崎雪子が天使の様に愛くるしく浅草映画街のシーンもz(天井桟敷人々)みたいでハラハラさせられてー。二人の名匠の作品に脱帽♪
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Commented
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Tsukimoto_Natsumi at 2016-05-02 00:51
今回のヴェーラの「千葉泰樹特集」では、その常連のあだな草笛光子に惚れ直しました。島崎雪子は「夜の緋牡丹」もよいですよね!
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by
PineWood
at 2016-05-09 06:06
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千葉泰樹監督作品(裸の重役)等の草笛光子さん、そう実に、チャーミングでしたね♪(香港の夜)や(香港の星)など香港シリーズのユー・ミンさんとか(沈丁花)の京、星、司、団といい女性美の引き出し方の手腕では千葉監督はヒッチコック監督と並ぶのかも知れませんね。(夜の緋牡丹)の島崎雪子も確かに佳かった…。(スリ)や(ラルジャン)のブレッソン監督作品では、(やさしい女)の女学生のドミニク・サンダ嬢も初々しく、映画(白夜)で暗闇に浮かび上がるヌードも見事でしたがー。また、清水宏監督の戦前の作品では(簪)の田中絹代さんや(按摩と女)の小三実千代さんが竹久夢二の美人画の中の傘をさす芸者姿の出で立ちみたいに登場して思わずハッとさせられます!
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